ヤマハ発動機の新たな挑戦。社内ラジオを活用し、経営層の思いを現場へ届ける“対話型”メディアの作り方

ヤマハ発動機の新たな挑戦。社内ラジオを活用し、経営層の思いを現場へ届ける“対話型”メディアの作り方

「感動創造企業」を企業目的に掲げ、ランドモビリティからマリン、ロボティクスなど多岐にわたる事業をグローバルに展開しているヤマハ発動機株式会社。組織の拡大とともにコミュニケーション手段が多様化する一方、経営戦略本部が管轄する全社戦略をはじめ、経営層の思いや戦略の背景、新規事業など将来への投資活動の取り組みが現場まで十分に届ききっていないという課題を抱えていました。

そこで同社は、本部の活動を発信する「IGNITION POINT」=着火点、という、モビリティ企業の社員の心に火を灯すことをモチーフにした社内メディアを開始。業務中や移動中にも「ながら」で手軽に聴ける部門発信の社内ラジオ番組『ながらIGNITION』を中核コンテンツとし、社内エンゲージメント向上の取り組みを行っています。

今回は、社内ラジオを始めたきっかけを皮切りに、施策の効果や今後の展望について、同社の経営戦略本部に所属する木村様、片山様にお話を伺いました。

企業様紹介
企業名:ヤマハ発動機株式会社 経営戦略本部
URL:https://global.yamaha-motor.com/jp/
1955年の創業以来、二輪車開発で培った「パワートレイン技術」や「車体・艇体技術」をコアとし、制御・コンポーネント技術を融合させながら事業の多角化とグローバル展開を推進。現在は、ランドモビリティからマリン、ロボティクスなど多岐にわたる事業を手がけている。

※本記事は、株式会社オトナルの取材記事をもとに、一部再構成したものです

届いていなかった層へ“思い”を伝える。社内ラジオという新たなアプローチ

まずは、ヤマハ発動機株式会社の事業内容と、木村様、片山様の業務を通じたミッションについて教えてください。

〈木村様〉
当社は、「パワートレイン技術」や「車体・艇体技術」を強みに、ランドモビリティからマリン、ロボティクスなど多岐にわたる事業をグローバルに展開しています。

私たちは、所属する経営戦略本部で管轄している戦略業務や新規事業、投資部門の情報発信と、その支援業務を担っています。また、DX戦略部の一員として、DX戦略全体の見直しに伴う分析や調査業務など、戦略推進業務に携わっています。

社内ラジオを始める前、社内での戦略に関するコミュニケーションに関してどんな課題を感じていたのでしょうか?

〈木村様〉
当社では、インナーコミュニケーションの手段として紙の社内報やイントラサイト、動画コンテンツなどを活用しています。ですが、経営戦略本部の活動に関する発信を検討する場合、既存の媒体だけではカバーしきれないトピックもあったため、新しい施策の検討を始めました。

検討にあたって意識していたのは、以下の2点です。

・忙しい社員が手軽に情報をキャッチアップできること
・次世代を担う社員に、戦略の背景や経営層の思いをしっかり伝えられること

そうした中で「最近はポッドキャストなどの音声メディアを聴く若者が増えている」という情報を知り、社内ラジオの検討を進めていきました。これまで情報が届いていなかった層にも、ラジオやポッドキャストという形式であれば、会社からのメッセージが伝わるのではないかと期待しました。

ヤマハ発動機の建物とYAMAHAのサイン

聴き手の「間」と「導線」にこだわり、継続できるコンテンツへ

社内ラジオ番組『ながらIGNITION』の全体像について教えてください。

〈木村様〉
『ながらIGNITION』は、社員が見慣れている映像という手段を採用しつつ、画面に張り付かなくても「ながら」で聴けるビデオポッドキャストという形で配信しています。

番組名にある「ながら」は、忙しい社員でも業務中や移動中にスッと耳に入ってくるコンテンツであることを表現しています。また「IGNITION(イグニッション)」は、私たちが運営する社内メディア「IGNITION POINT」に由来しています。エンジンの“点火”を意味する言葉でもあり、社員からも馴染みやすく心が躍るワードとして好評だったため、このタイトルを採用しました。

ちなみに、隣にいる片山は当番組のMCを務めているのですが、顔を出さずに声だけで出演しています。

〈片山様〉
正直なところ、最初はかなり緊張していました(笑)。ただ、台本作成や収録時のディレクションを丁寧にサポートしていただいているので、最近は少しずつ落ち着いて進行できるようになってきたと感じています。

オトナルをパートナーとして選定いただいた決め手は何でしたか?

〈木村様〉
様々な実績を持たれていることはもちろん、番組制作において何でも相談に乗ってくれる心強いパートナーだと感じたことが大きいですね。

特に印象的だったのは、パートナー選定時のやり取りです。社内で議論を重ねる中で「ラジオの肝は『間』の詰め方だ」という話になり、「間」の調整を妥協なく行える会社を探していました。

そこでオトナルさんに「『間』を詰めた編集をしてほしい」と相談したところ、「できます」と即答していただけたんです。その頼もしさを魅力に感じ、プロジェクトをお願いすることにしました。

番組を継続して運用していくために、どのような工夫や取り組みを行っていますか?

〈木村様〉
運用面で最も意識しているのは、聴いた後に何を持って帰ってもらいたいかという「読後感」のデザインです。原稿作成の段階から、ゲストにも「今回は聴き手にこういう気持ちを受け取ってもらいたい」という目的を共有したうえで、内容を落とし込んでいます。

また、ゲスト選定も重要ですね。本部内の多様な部署から順番に回していく空気感を作ると同時に、「今、社内に伝えたい課題やメッセージがある人」に登場してもらうことで、ゲストにもメリットがある形を目指しています。

〈片山様〉
配信後の「届け方」の面では、コンテンツの公開と同時に、文字起こしをもとにしたテキスト記事も社内サイトに掲載しています。音声や動画だけでは他の社内ページへのリンク(導線)を貼るのが難しいため、テキスト記事を添えることで関連ページへ誘導できるようにしています。

社内アンケートでも「動画や音声で聴く派」と「テキストで読む派」で好みがきれいに分かれました。だからこそ、どちらの層にもリーチできるよう、2つの形式をセットで発信し続けることが大切だと思います。

ヤマハ発動機のオフィス

音声ならではの「対話」が引き出す本音と社内の変化

実際にスタートしてみて、社員からの反響や変化はいかがですか?

〈片山様〉
アンケート結果を見ると、意図通り「ながら」で聴く人の比率が上がってきています。編集の「間」についても、「好きなYouTubeチャンネルみたいな編集で嬉しかった」「すごく聴きやすかった」といったポジティブなフィードバックが届いています。

キャリアをテーマにしたエピソードでは、「キャリアは自分が思っている以上に広がっていくものだと実感した」という声がありました。ゲストのメッセージがしっかり届いている手応えを感じています。

また、ゲストも周囲から「聴いたよ」「こんなこと考えてたんだね」と声をかけられることがあるそうです。社員同士の相互理解につながっているのを感じますね。

従来のテキストや動画施策と比較して、「音声」ならではの良さはどこにあると感じますか?

〈木村様〉
原稿読みや資料説明型のコンテンツだと専門用語に偏りがちですが、対話にすることで話の粒度がぐっと分かりやすくなるのが魅力ですね。特に、「聞き手」を立てて対話形式にすることで、「話し手」に分かりやすく説明しようという意識が生まれるように感じます。

〈片山様〉
「あとから編集できる」という安心感も音声メディアの良さだと思います。途中で言い淀んだりしても、「もう一度やり直そう」とすぐに切り替えられるため、本音を話しやすいのではないでしょうか。

YAMAHAロゴがある撮影・収録スペース

社内ラジオで、経営層のメッセージ浸透に挑戦する

今後、社内ラジオで新しく実施したい取り組みはありますか?

〈片山様〉
今後は、経営戦略本部長と取締役による対談コンテンツに取り組む予定です。堅くなりがちな戦略部門と経営層の対談を、ポッドキャストという親しみやすいフォーマットに落とし込み、いかに「現場の社員が興味を持って聴ける面白いコンテンツ」として届けられるか。ここが次の挑戦ですね。

〈木村様〉
会社が発信している重要なメッセージを、現場社員まで「腹落ち」させるのはとても難しい。この課題を解決することが私たちのチームのミッションです。決定事項ではない、生煮えのものであっても『ながらIGNITION』のような媒体で、背景を含めて丁寧に伝えることで、共感につなげていく。この経験で積み重ねてきたノウハウを、今後は様々な形で活かしていきたいと考えています。

ありがとうございました。ポッドキャストならではの強みを活かしながら、社内エンゲージメントを高める施策の全体像を伺うことができました。

〈木村様〉
どれだけ情報伝達の手段が増えても、一方通行の発信だけでは届かない思いや本音があると感じています。だからこそ、音声や対話形式のように「話し手のニュアンスや熱量」がダイレクトに伝わるメディアの重要性は、今後の社内コミュニケーションにおいてより高まっていくのではないでしょうか。

社内全体に思いを届けるのは簡単ではありませんが、これからも社内ラジオを通じたコミュニケーション施策にチャレンジしていきたいです。

YAMAHAロゴの前に座るヤマハ発動機株式会社の木村様と片山様