インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」。
第18回は、共同通信が配信するフィギュアスケート専門番組『Deep Edge Plus 〜フィギュアスケート専門情報番組〜』(以下、Deep Edge Plus)のナビゲーターである米良さんにお話を伺いました。

フィギュアスケート担当記者によるフィギュアスケートファンのためのポッドキャスト『Deep Edge Plus』。ポッドキャストを始めた経緯や番組制作の裏側について伺いながら、音声メディアの魅力や今後実現したいことを語ってもらいました。
また、本記事はFM大阪にて放送中のラジオ番組『オトナル原口大輝のエスケープジャーニー』との連動記事となっています。
『Deep Edge Plus』が語る音声メディアの魅力
本記事では、『Deep Edge Plus』のナビゲーターである米良さんに、ポッドキャストをはじめとする音声メディアの魅力を伺っていきます。
番組紹介:『Deep Edge Plus〜フィギュアスケート専門情報番組〜』
『Deep Edge Plus』は、共同通信社のフィギュアスケート担当記者による、フィギュアスケート専門情報番組です。国内外の大会の取材の裏話や、選手の素顔について紹介しています。
ひとつの企画がきっかけで番組に
──『Deep Edge Plus』はどのような番組か、簡単に教えてください。
フィギュアスケートの取材記者による、フィギュアスケートファンのための番組です。共同通信が運営するフィギュアスケート専門サイト「Deep Edge Plus」と連動して、記事に載せきれなかった選手の素顔や、取材を通じて知った裏話などを、実際に取材した担当記者とともに伝えています。
──米良さん自身についても、お伺いしていいですか?
私は大学卒業後に共同通信に入社し、15年以上記者をしていました。現在は編集局デジタルコンテンツ部に異動し、ニュースサイト向けの記事を編集したり、『Deep Edge Plus』をはじめとする共同通信のポッドキャスト番組を制作したりしています。『Deep Edge Plus』では番組ナビゲーターも務めています。
もともと、それほど熱心にフィギュアスケートを観ていたわけではありませんでしたが、2シーズン携わったことで、少しずつ競技について理解が深まってきたように感じます。
──どのようなきっかけで番組を始められたのですか?
番組を立ち上げる前に、『共同通信Podcastーニュースの裏側も、多言語学習も、経済もー』でフィギュアスケートの話題を取り上げたことがありました。
この回にとんでもなく大きな反響がありまして。ダウンロード数は3倍、同じ内容のYouTube版も10倍近く聴かれるという、驚異的な数字を叩き出したんです。
──ものすごい反響ですね。
元は50行程度の新聞のインタビュー記事だったのですが、ポッドキャストでは選手の言葉のニュアンスなど、記事にする際に削ぎ落とした細かな部分までお話しすることができました。フィギュアスケートには熱心なファンが多く、より詳しい情報が求められていたのだと思います。実際にファンの方からも、「詳しい言葉のニュアンスがわかって嬉しかった!」「これからもフィギュアの話題を取り上げてほしい!」という感想が多く届きました。
この経験があったので、フィギュアスケート専門サイト「Deep Edge Plus」を立ち上げる際に、サイトのPRとしてポッドキャスト番組があったら良いんじゃないかと考え、ポッドキャスト番組『Deep Edge Plus』を企画しました。

──リスナーにはどのような方が多いのですか?
データで見ると、50代以上の女性が圧倒的に多いです。
──ポッドキャストは若年層で多く聴かれているというデータもあります。年齢層によって聴かれる媒体に違いはありますか?
SpotifyやApple Podcastなどのポッドキャストアプリで聴かれる方もいらっしゃいますが、年配の方にはYouTubeで聴かれていますね。最近は、テレビでYouTubeを視聴することもできるので。
あとは、X(旧Twitter)で番組の告知をする際に配信システム(再生プレイヤー)であるOmnyStudioや「Deep Edge Plus」サイトのURLを貼るのですが、そこから聴かれている方がすごく多いですね。年代によって親しみのあるプラットフォームが異なるので、ターゲットに合わせて配信方法を工夫しています。

──実際に番組を配信し始めて、どのような感想がありましたか?
番組のお便りフォームとXへの投稿から感想をいただくのですが、本当に励まされるお便りばかりです。「この企画をやってくださり、ありがとうございました」というものが多く、フィギュアスケートは温かいファンに支えられている競技だと改めて実感しています。チームですぐに共有して、みんなで頑張ろうという気持ちになっています。
どの選手についても平等に伝えたい
──具体的な企画編集のプロセスについても教えてください。
基本的には私が、企画から配信までワンオペで担当しております。
「Deep Edge Plus」のサイト責任者でもあるので、まず出演を依頼する記者とテーマを、掲載記事の中から選びます。収録は、共同通信社内の簡易的なスタジオで行っています。といっても、防音設備はそれほど整っていない環境ではあるのですが。ただ、競技会はほとんど地方や海外で開かれているため、「収録はオンライン、スタジオには私だけ」ということが多いですね。
収録の際には、基本的に台本は用意していません。私は選手を紹介する順番を書いたメモだけ用意して、記者の方には取材メモを手元に置いてもらい、ぶっつけ本番で収録しています。打ち合わせ5〜10分、本番30〜40分、その後、私がひとりで編集から配信まで担当しています。
──ひとりの選手を、ひとりの記者が担当するという形なのでしょうか?
いえ、ひとつの大会をほぼひとりの記者が取材しています。演技を終えた選手は得点を確認した後に、ミックスゾーンという取材スペースに来るので、そこで取材をします。たいていは複数の選手に取材するため、「演技を見る→取材する→次の演技を見る」という感じで、休む間もなく取材する形になります。
だからフィギュアスケートの取材は、共同通信の中でも相当ハードな部類に入るといえます。当日の練習は朝7時くらいから始まり、大会が終わるのは夜中です。それを丸一日通して取材するわけですから。もちろん、全日本選手権や世界選手権のように日本人選手がたくさん出場する場合は、何名かの記者で取材しますが、それでもかなり大変だと思います。
──そこまで忙しいと、選手ひとりに対して取材するタイミングは少なくなってしまうじゃないかと思ってしまうのですが……。
実はフィギュアスケートの取材って、他のスポーツとは異なりひとりの選手に複数の取材機会が設けられているんですね。本番前の公開練習の後の取材、ショートプログラムの後の取材、フリーの後の取材、一夜明けた後の取材というように。だから選手の皆さんも記者と顔見知りになって、かなり本音で話してくださるみたいです。
──なるほど、それだけ取材の機会があるからこそ、いろいろな話を引き出せるんですね。
おっしゃるとおりで、ポッドキャストを始めてから、記者もポッドキャスト用の小ネタを探してくれるようになりました。
フィギュアスケートのファンの方たちは、「箱推し」といって、フィギュアスケート全体を応援してくださっている方が多いんです。記事では紙面の都合上、入賞者しか取り上げられないですが、ポッドキャストでは出場したすべての選手を取り上げてエピソードを聞くようにしています。転倒など失敗してしまった選手についても、良かった点を必ず質問するようにしています。
──ミスの原因をどのように分析しているのか聞けるのは、ファンとしても嬉しいですね。
どの選手についても平等に伝えられるというのは、ポッドキャストの強みです。フィギュアスケートを立体的に見られるため、ファンの方にも喜んでいただけていると思います。
共同通信のポッドキャストについて
──番組づくりにあたって参考にした番組、あるいは米良さん自身が影響を受けたポッドキャスト番組を教えてください。
ポッドキャストを聴き始めてから欠かさずチェックしている番組は、NewsPicksの『WOMANSHIP -はたらく私たちのお悩みサミット』ですね。

──『WOMANSHIP』さん、この企画にも来ていただいたことがありますが、どのような点に魅力を感じているのでしょうか?
「働くわたしたちのお悩み相談室」って、まさに私みたいだなと思って、共感しながら聴いています。以前、共同通信のポッドキャストともコラボしていただいたことがあるのですが、本当に3人ともお話が上手で。通勤中の電車で聴きながら、思わず頷いてしまいますね。
──共同通信は『Deep Edge Plus』以外にも、ポッドキャストを配信しています。他の番組はどのような経緯で立ち上げられたのでしょうか??
現在、共同通信には、ニュースや語学に関する8つのポッドキャスト番組があります。大手の朝日新聞社さんや毎日新聞社さんがやられているのを見て、共同通信でもやってみたいという有志のチームが立ち上がりました。その中で、「私もやりたい!」という人がどんどん出てきて、気づいたら8番組もできていました。

──社内でポッドキャストは、どのようなイメージをもたれていますか?
社内で最も認知度が高いのは、多くの記者が出演している『きくリポ』という番組です。「47リポーターズ」という長文記事を書いた記者が出演して、その記事について語るという内容になっています。入社2、3年目の若手記者のあいだでは、「あれに出たら同期の中でも頭ひとつ抜けたよね」みたいになるらしいです。実際に出演した記者からは「出演できて嬉しいです!」という反応が多いので、社内でもポジティブな印象を持たれているのかなと思います。
──最後に、今後の目標について教えてください。
フィギュアスケートは競技の特性上、夏はオフシーズンのため大会が開かれていません。『Deep Edge Plus』では、オフシーズンでも楽しんでいただけるよう、オンシーズンに貯めていた大会の裏話をたくさん出していきたいと思っています。それから、オフシーズンはアイスショーが盛んです。アイスショーは、ニュースで取り上げられることが少ないので、ポッドキャストで詳しく伝えていきたいですね。
また、共同通信には『Deep Edge Plus』以外にも7つのポッドキャスト番組があります。ニュースや語学が学べて、聞き応えのある番組ばかりなので、この機会にそちらもぜひ聴いていただけたらと思います!
取材を振り返って
新聞記事では取り上げきれない選手の言葉や、大会の裏話を伝える『Deep Edge Plus』。通信社ならではの取材の様子や、番組作りの裏側を垣間見ることのできた取材でした。
インタビューはFM大阪にて放送中のラジオ番組『オトナル原口大輝のエスケープジャーニー』のポッドキャスト版で、全編聴くことができます。ぜひお聴きください!
『Deep Edge Plus 〜フィギュアスケート専門情報番組〜』
連載「ポッドキャスターに聴く」では、今後もいろいろなポッドキャスターの方々にお話をお聞きしていく予定です。その他の記事も「ポッドキャスターに聴く」の一覧ページからチェックしてみてください。


