ポッドキャストを「自分がなんでもしていい居場所」に。歌人・上坂あゆ美が語る音声配信の魅力

インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」

第12回は、『上坂あゆ美の「私より先に丁寧に暮らすな」』のパーソナリティである上坂あゆ美さんに話を聞きました。

ポッドキャストを「自分がなんでもしていい居場所」に。歌人・上坂あゆ美が語る音声配信の魅力

幅広く、そして奥深い雑談で人気を博している『上坂あゆ美の「私より先に丁寧に暮らすな」』。歌人と僧侶による異色のポッドキャスト番組はどのように始まったのか、その経緯や番組制作の裏側について伺いながら、音声メディアの魅力や今後実現したいことを語ってもらいました。

また、本記事はFM大阪にて放送中のラジオ番組『オトナル原口大輝のエスケープジャーニー』との連動記事となっています。

上坂あゆ美が語る音声メディアの魅力

本記事では、『上坂あゆ美の「私より先に丁寧に暮らすな」』のパーソナリティである上坂あゆ美さんに、ポッドキャストをはじめとする音声メディアの魅力を伺っていきます。

番組紹介:『上坂あゆ美の「私より先に丁寧に暮らすな」』

『上坂あゆ美の「私より先に丁寧に暮らすな」』は、歌人・エッセイストの上坂あゆ美さんが、京都在住の僧侶の鵜飼ヨシキさんと配信する雑談ポッドキャスト番組です。幅広く、そして奥深いトークが人気を集め、Spotifyが発表する次世代のポッドキャストカルチャーを担うクリエイター「RADAR: Podcasters 2025」に選出されました。

文筆家がポッドキャストを始めた理由

──『上坂あゆ美の私より先に丁寧に暮らすな』はどのような番組ですか?

一言で表すのは難しいのですが、人に紹介するときは「とにかく幅広い雑談番組」という言い方をしています。

ギャグみたいな話や好きなファミレスの話から、重たい人生のトラウマや呪いのようなものまで幅広くお送りしています。

ポッドキャストは「自分がなんでもしていい居場所」。歌人・上坂あゆ美が語る音声配信の魅力
上坂あゆ美さん

──基本的にはリスナーからのお便りを中心に、そこから深掘りをしていく感じでしょうか?

そういう回が多いですね。あとは、一緒に番組をやっている鵜飼さんや私がそれぞれ喋りたいテーマや最近気になったトピックがあれば、お互いメモをしあってそれをただ2人で喋るような回もあります。最近だと『「清潔感ある人が好き」についての考察』です。

──番組を始めたきっかけはなんですか?

私は普段、歌人や文筆家として活動しています。もともと創作の動機には、文化的・経済的にあまり恵まれていない子に向けて、人生の生き抜き方を自分なりに伝えたいっていうのがあったんですね。

でも、そもそも短歌って、そういう子たちに届かないのではないかと感じていました。短歌の本は値が張りますし、小規模な図書館にはあまり置かれていません。そこで、10代の方々にアクセスできるメディアとして、TikTokかYouTubeかポッドキャストのどれかをやろうと計画しました。

──その3つから、なぜポッドキャストを選んだのですか?

TikTokやYouTubeは10代にとって馴染みのメディアですが、私の家は汚すぎて映像が撮れないと気づいたんですよ。音声だけなら家が汚くても問題ないので、ポッドキャストを始めました。番組のタイトル『私より先に丁寧に暮らすな』もこうした経緯に由来しています。

──もともとラジオは聴いていたんですか?

あまり聴いてこなかったんです。2023年8月12日に『上坂あゆ美のオールナイトニッポン0(ZERO)』を担当したんですが、それでようやく聴くようになったという感じです。あのときは、構成作家さんのフォローで良い感じに演出いただきました。

ポッドキャストは「自分がなんでもしていい居場所」

──普段は僧侶の鵜飼さんと一緒に配信をされています。

鵜飼さんが京都、私が東京と離れて住んでいるので、Zoomを使って通話しています。それぞれのiPhoneで録った音声を、後で編集でつなげています。ちなみに編集は、どちらか暇な方が担当しています(笑)。攻めすぎた話をしたときには自分でカット箇所を選びたいので、自分で編集できるのは良いですね。

──もともと編集経験などはあったのですか?

全くありませんでした。私は美術大学の出身なので、映像編集は経験があったのですが、音声に関しては一切関わったことがありませんでした。幸いなことに、鵜飼さんがずっと音楽をやっているので、彼にレクチャーを受けながら編集方法を学んでいきました。

──番組づくりにあたって大切にしていることはなんですか?

ポッドキャストを、「自分がなんでもしていい居場所」にすることです。これは番組を始めたときに決めたことでもあります。

私は短歌もやっていればエッセイもやっていて、ラジオ局に呼ばれて話をすることもあります。そのなかで、ポッドキャストだけは他者のウケとか数字とかを気にせず、とにかく私と鵜飼さんが楽しく無理なくやるということを大切にしています。

そのうえで、「頑張らない」ことも意識しています。

この番組は配信日を決めていません。「配信しなくちゃ」と追われるのでなく、収録したいときに収録して、良きタイミングで配信できれば良いのかなと。

──先日、Spotifyが発表する「RADAR: Podcasters 2025」に選出されました。

Spotifyのアプリも、私たちの番組をレコメンドしてくれる機会が増えましたね。数字などはあまり見ないようにしつつも、リスナーさんの声や感想が増えてきている実感があります。

音声の良さは「速度がちょうどいい」

──ポッドキャストは、ご自身の生活に良い影響を与えていますか?

はい。ポッドキャストをやって良かったと日々思っています!鵜飼さんと、番組を始める前よりも仲良くなれて嬉しいです。

あと、短歌やエッセイなどの文章では表現しにくい話のネタでも、喋りだと伝わることもあります。そうしたネタをいつでも出せるという点も、ポッドキャストをやってて良かったなと思っています。

──音声の良い点はどのような点にあると思いますか?

2点あります。

ひとつは、「速度が早い話」ができることです。「速度が早い話」というのは、笑いやトークのスピード感のことです。音声だとオチまでの間合いがちょうどいいと感じています。自分の感覚では、エッセイとテレビのバラエティ番組の笑いの、ちょうど中間くらいの立ち位置に音声があるように思います。

もうひとつは、「自分の中で答えが出ていない話」ができることです。鵜飼さんと話しているときでも、話が思わぬ方向に行くことが多いんです。ひとりで考えて原稿用紙に向かっていたら、絶対に出てこないような答えが出てくることがあって、それこそ会話の醍醐味だと思います。

自分ひとりでものをつくっていると、自分が考えた範囲を超えることがあまりなく、がっかりすることも多いです。でも会話だと、最初の目的と全く違うところに着地することもあり、そこが音声メディアの優れた部分だと感じますね。

──最後に、今後の目標について教えてください。

半ば冗談ですが、「武道館を目指したい」という話を鵜飼さんとしています。あまりに壮大な目標ですが、「武道館」という言葉が挙がるくらい、リスナーさんの輪が広がっているのは嬉しいですね。

個人としても、「楽しく健康」を意識しながら日々過ごしていきたいと考えています。プロとして活動していると、お金のために“やりたくない仕事”を受けてしまうことがあって。仕方ないことですが、「楽しく健康」を貫くのは意外と難しいなと痛感します。

それでも、「楽しく健康」を掲げて、本気で楽しく健康に生きたいと思います!

取材を振り返って

「ポッドキャストを自分がなんでもしていい居場所にすること」、「頑張らないこと」を掲げてポッドキャストを配信する上坂さん。番組制作の裏側をじっくりと知ることができる取材でした。

インタビューはFM大阪にて放送中のラジオ番組『オトナル原口大輝のエスケープジャーニー』のポッドキャスト版で全編聴くことができます。ぜひお聴きください!

上坂あゆ美の「私より先に丁寧に暮らすな」

連載「ポッドキャスターに聴く」では、今後もいろいろなポッドキャスターの方々にお話をお聞きしていく予定です。その他の記事も「ポッドキャスターに聴く」の一覧ページからチェックしてみてください。

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