インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」。
第13回は、『ほんのれんラジオ』を配信する、ほんのれん編集部に話を伺いました。
「読書して対話することの楽しさを伝えたい」と語るほんのれん編集部。ポッドキャストを始めた経緯や番組制作の裏側について伺いながら、音声メディアの魅力や今後実現したいことを語ってもらいました。
ほんのれんが語る音声メディアの魅力
本記事では、『ほんのれんラジオ』を配信する編集工学研究所のほんのれん編集部に、ポッドキャストをはじめとする音声メディアの魅力を伺っていきます。
番組紹介:ほんのれんラジオ
『ほんのれんラジオ』は、4人の女性編集者・ライターが送る、本をテーマにした教養系ポッドキャスト番組です。「働くって何をすること?」「共感ってどんな力?」など色々な問いについて、厳選した書籍を紹介しています。
本を読み、対話する楽しさを伝えたい
──『ほんのれんラジオ』はどのような番組ですか?
ゆるく深く本と遊ぶ教養系ポッドキャストです。本を読みながら、普段当たり前だと思っていることを深掘りして、あえて“混乱”することも楽しむ番組づくりを目指しています。
「働くってなんだ?」「ホントの自分ってなに?」といった問いを立て、それらの問いを考えるためのヒントとなる本をたくさん集めて読み、特におすすめの本を紹介しながらおしゃべりしています。

引用元: 【はじめての方へ】ほんのれんラジオとは?扱った本一覧リスト全130冊(2025/5現在)
──番組を始めたきっかけは何ですか?
『ほんのれんラジオ』は、当社(編集工学研究所)と丸善雄松堂が提供する選書サービス「ほんのれん」から生まれました。「ほんのれん」は、企業や学校、公共施設に小さなライブラリースペースを設置し、本を活用したコミュニケーションや学びの活性化を目指しています。
本を読んで対話することを「読書対話」と名付け、音声メディアでもこの楽しさを伝えたいと思い、『ほんのれんラジオ』を始めました。
──番組のパーソナリティは、どんな方々が担当しているのでしょうか?
「ほんのれん」で、毎月の問いづくりや選書、冊子などの編集制作を行っている30代の女性編集者が担当しています。時々メンバーが入れ替わったり、ゲストの方にお越しいただいたりすることもあります。
──4人の皆さんの息の合ったトークがとても聴きやすいです。
ありがとうございます。ただ実は、「本が好き」という共通点はありつつ、性格や価値観、視点はそれぞれ異なる4名なんです。
だからこそ、ひとりでは考えもつかなかったような話へと展開することもあり、それこそがポッドキャストの醍醐味かなと思いますね。
──リスナーにはどのような方が多いのでしょうか?
男女比は半々で、20〜60代まで幅広い年代の方に聴いていただいています。特に多いのは、30〜50代のリスナーさんです。
現役の女子高校生の方や海外で哲学を学んでおられる研究者、グローバル企業の社長さんまで、多様な方が聴いてくださっており、驚いています。少し前は、ニューヨーク在住のリスナーさんが、一時帰国中にオフィスまで訪ねてくれたこともあります。
──印象的だった感想はありますか?
『ほんのれんラジオ』を聴いたら、読書熱が再燃したというメッセージですね。たまたまレコメンドで上がってきた『ほんのれんラジオ』の民主主義シリーズを聞いたら、しばらく読書から離れていたけれど、そのとき取り上げられた本を読みたくなって読んでみた、と。
「民主主義なんて難しいテーマだったけど、いきなり大海に飛び込むのではなく、ほんのれんラジオが投げてくれた浮き輪につかまって泳ぎ切れた」と書いてくださっていて、難しそうな分野に対しても「おもしろい!わかった!」という入口を作れたのかなと思って嬉しかったです。
おしゃべりを通して、発見や問いが生まれる
──番組をつくる上で大事にしていることは何ですか?
肩ひじ張らず、自然な対話をお届けすることです。その場での発見やおしゃべりを楽しむことを心がけています。
特に収録の最中に、意外な発見や新たな問いが生まれることを大切にしています。リスナーさんも、思わず考えてしまうような「問い」を設定することにもこだわっていますね。
また、本の知識が「正解」にならないように気をつけています。そのために、本の内容ではなく、自分たちの読み方を伝えるようにしています。
──番組づくりにあたって参考にした番組はありますか?
『超相対性理論』パーソナリティの荒木博行さんにゲスト出演いただいた際に、「『ほんのれんラジオ』は、『超相対性理論』と『コテンラジオ』のちょうど中間だね」と言っていただきました。しっかり準備された内容が5割、その場で生まれる対話や雑談が5割、という意味です。

事前準備と当日のライブ感、どれくらいの塩梅が良いのか悩んでもいましたが、荒木さんのアドバイスがきっかけで、「ほんのれんラジオは5:5で行こう!」とみんなでスッキリしました。今でもこのバランスを指針にしています。
──初めて『ほんのれんラジオ』を聴く方に、おすすめの回はありますか?
まずは、「問いはどこに隠れてる?」シリーズ(エピソード22-1 ~ 22-5)です。
AI時代には「問うこと」や「問う力」が大切、とよく言われます。しかし「そもそも問うって何すること?」「自分の問いを見つけるのって難しいけどどうすればいい?」というところから、色んな本にヒントをもらいながら話しています
次は、疲れシリーズ(エピソード19-1〜19.6)です。
「疲れた〜!」という時に、ぐうたら聴いてほしいですね。リスナーさんから、「疲れ」への見方が変わったという声がたくさん届きました。
また、反響が大きかったのは、作家で元外交官の佐藤優さんをゲストにお招きした回(エピソード23-1、23-2)です。佐藤さんに恋愛について語ってもらうという意外性と、佐藤さんの質・量ともに猛烈なトークに翻弄されるメンバーの様子が面白かったようです。現代社会における恋愛がはらむ問題点を暴きながら、「本来の恋とは?」「愛とは?」をあれこれ語っています。
音声メディアと出版メディアの架け橋に
──番組を運営するにあたり、マネタイズの取り組みは行っていますか?
『ほんのれんラジオ』自体でのマネタイズの取り組みはまだ行っていません。ただ私たちのポッドキャストは、「ほんのれん」という法人向けサービスの一環で運営しているので、「ほんのれん」の取り組みやサービスがリスナーさんにも認知されていくと嬉しいなと考えています。
「ほんのれん」で作成しているオリジナル冊子「ほんのれん旬感ノート」は、各種イベントや書店フェアの際に販売しています。機会があれば、ぜひお手にとっていただけたら嬉しいです!
──今後の目標はありますか?
「ほんのれん」として、書籍の出版を目指しています!本を紹介するポッドキャストだからこそ、音声メディアと出版メディアを架け橋するような活動に、これからも積極的に取り組んでいけたら嬉しいです。
自分たちが実践するなかで、本を手に対話する「読書対話」は、人間の先入観やバイアスを乗り越え、新たな視点をもたらす学びの方法だと実感しています。「読書対話」というスタイルを、もっと広げていきたいですね。
──最後に、これからポッドキャストを始める人へのアドバイスをお願いします!
まずは自分たちが楽しむというのが、やっぱり一番大事だと思います。楽しみながら、「話す」スキルを高めることができるし、対話から意外なものも生まれてくるのが面白いです。そして何よりも、リスナーさんと一緒に学び合える環境としても最適なメディアだと思います。
これからもポッドキャストを通じて、たくさんの本を紹介しつつ、リスナーさんと共に学び合い、一緒に番組を作っていけるような関係性を築いていきたいです。
取材を振り返って
読書の中から対話を生み、そして問いから新たな視点をもたらす「読書対話」を続ける『ほんのれんラジオ』。音声メディアと出版メディアのこれからや、番組制作の背景について迫ることができる取材でした。
インタビューにあたり、ほんのれん編集部より『ほんのれんラジオ』を紹介する音声コメントもいただいています。実際のパーソナリティの皆様の声で番組の魅力が語られていますので、ぜひお聴きください!
ほんのれんラジオ
連載「ポッドキャスターに聴く」では、今後もいろいろなポッドキャスターの方々にお話をお聞きしていく予定です。その他の記事も「ポッドキャスターに聴く」の一覧ページからチェックしてみてください。