朝日新聞社は7月24日、同社メディア研究開発センターのAI研究論文が、国際会議「Interspeech 2026」に採択されたと発表しました。本論文はAIモデルを大幅に小型化しながら高品質なノイズ除去を実現する新手法「QC-GAN」を提案しており、報道現場での活用や、音声書き起こし対応のコンテンツ制作支援サービス「ALOFA」への技術転用が検討されています。

採択論文の概要と「QC-GAN」の技術的特徴
国際会議に採択された論文は、朝日新聞社メディア研究開発センターの山内将吾氏が主著者として執筆したものです。同研究では、雑音の中から人の声をクリアに取り出す音声強調(ノイズ除去)において、パラメータ効率に優れる新手法「QC-GAN」を提案しています。
音声強調は、スマートフォンや補聴器、オンライン会議などで広く活用されています。近年は深層学習を用いたAI技術によって音質が大幅に向上したものの、高い品質を得ようとするとモデルが大型化し、多くの計算資源を必要とする点が課題でした。特に、音の波のタイミングを示す位相情報は、モデルを小型化すると失われやすいことが知られています。
四元数を活用した新手法「QC-GAN」
本研究では、音の大きさとタイミングの情報を効率よく扱う数学的手法である四元数を活用し、音声処理に優れたAI技術と組み合わせた新手法「QC-GAN」を提案しました。さらに、人が感じる聞き取りやすさを高める学習手法「MetricGAN」を取り入れました。
代表的な評価用データセットでの検証において、従来の最先端モデルの半分以下となる約89万パラメータで同等の高音質を達成したほか、約3万5千パラメータまで極限に小型化した場合でも従来の軽量手法を上回る品質を示しました。
「Interspeech 2026」での発表と社内サービスへの展開
今回論文が採択された「Interspeech 2026」は、International Speech Communication Associationが主催する音声言語処理分野の国際会議です。9月27日から10月1日にかけてオーストラリアのシドニーで開催される予定となっており、本論文は今回新設された「長文論文トラック(Long Paper Track)」での採択となりました。
本手法は、実際の利用環境に近い評価データセットにおいても有効性が確認されており、四元数の活用によって少ない計算資源で位相を保ち、高品質なノイズ除去ができることを示しています。
朝日新聞社では、本技術を音声や画像などの信号処理に応用し、報道現場での活用を検討する方針です。取材音声のノイズ除去や文字起こしを、少ない計算資源で高速かつ高品質に行えるようになることが期待されます。また、同社が提供している音声書き起こし対応のコンテンツ制作支援サービス「ALOFA」への技術転用についても検討しています。
International Speech Communication Associationとは
International Speech Communication Association(ISCA:国際音声コミュニケーション学会)は、音声コミュニケーションの科学および技術分野に関する学術振興と国際交流を目的とした非営利の国際学会です。前身の欧州組織(ESCA)から発展し、1999年に発足しました。音声認識や音声合成、音響学、言語学など広範な研究開発を促進しており、同分野における世界最大級の国際会議「Interspeech」の主催団体でもあります。
参照元:世界最大級の音声処理技術の国際会議「Interspeech 2026」で、朝日新聞社メディア研究開発センターの論文が採択



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