ポッドキャストが政治に興味を持つ入口に。TBSラジオ『セイジドウラク』が提案する政治の見方とは?

ラジオやポッドキャストの人気パーソナリティは、日々どんなことを考えて番組づくりに臨んでいるのか。音声メディアの名手にインタビューする本企画。第3回は、TBSラジオのポッドキャスト番組『セイジドウラク』でパーソナリティを務める、澤田大樹さんと宮原ジェフリーさんに話を伺いました。

ポッドキャストが政治に興味を持つ入口に。TBSラジオ『セイジドウラク』が提案する政治の見方とは?

琉球大学のクイズ研究会で知り合った澤田さんと宮原さん。政治の話題になったとき、「なんでこんなこと知ってるの?」と意気投合し、徐々に政治を語り合う仲になっていったそうです。

第6回JAPAN PODCAST AWARDSで、『セイジドウラク』は企画賞優秀賞を受賞。2025年8月には初の関西イベントも開催しました。政治の話題に事欠かない今、自他ともに”政治オタク”と認めるおふたりに、ポッドキャスト配信に至る経緯や番組への思いについてお聞きしました。

『セイジドウラク』パーソナリティが語る音声メディアの魅力とは?

本記事では、TBSラジオのポッドキャスト番組『セイジドウラク』でパーソナリティを務める、澤田大樹さんと宮原ジェフリーさんに、音声メディアの魅力について伺っていきます。

番組紹介
番組名:セイジドウラク(TBSラジオ)
URL:https://www.tbsradio.jp/sd/

TBSラジオ記者澤田大樹と選挙ライター宮原ジェフリーがお送りする「政治を道楽として楽しむ」番組。必ずしもタメになるわけではないけどおもしろい、趣味・道楽としての政治(あるいは世事)をマニア的な視点に取材・リサーチの成果を織り交ぜて語られている。

アイドルファンがアイドルを語るように、政治オタクが政治を語る

──番組を始めたきっかけについて教えてください。

澤田:僕らは大学時代、クイズ研究会で知り合い、ごく当たり前に政治について語り合う間柄でした。卒業後それぞれの道に進んだ後も、政治に関するネタをやりとりしていたんです。そんなとき、「雑談しながら政治を語るコンテンツって、意外とないよね」という話が出てきました。

ポッドキャストが政治に興味を持つ入口に。TBSラジオ『セイジドウラク』が提案する政治の見方とは?

宮原:政治系コンテンツは、特定の政党やイデオロギーに焦点を当てたものが少なくありません。僕たちはそうした枠にとらわれず、多様な視点から自由に議論できる場にしたいと考えました。

澤田:ポッドキャストを始める前、TBSラジオのYouTubeチャンネルで、選挙関連の配信をしたことがありました。7時間半という長尺コンテンツでしたが、僕らが雑談しながら政治について喋るだけの配信にもかかわらず、5万回近く再生されるという好評ぶりでした。「こんなに聴かれるなんて!」と、配信コンテンツのポテンシャルの高さに驚きました。

──個人的に、番組名に「ドウラク(道楽)」という言葉が入っているのが良いなと感じます。

澤田:ありがとうございます。僕らは政治に詳しい方ですが、決して専門家ではありません。だからこそ「解説」ではなく、ただただ「趣味」のように政治を語っているだけなんです。

宮原:まさに「趣味」ですね。鉄道マニアが鉄道を、アイドルファンがアイドルを熱く語るのと同じ感覚で、政治の話をしてもいいじゃないか、と。

ポッドキャストが政治に興味を持つ入口に。TBSラジオ『セイジドウラク』が提案する政治の見方とは?

「政治は難しい」というイメージを払拭したい

──あくまで「雑談」であって、「解説」をしているわけではないんですね。

宮原:用語の説明はしますが、基本的には楽しく話すことをメインにしています。なので政治に詳しい方は、少し物足りなく感じるかもしれません。

澤田:政治について話すハードルがもっと低くなると良いですよね。昔から「政治・宗教・野球の話はするな」と言われるように、なかなか政治の話はしづらいもの。『セイジドウラク』がきっかけで政治について話せるようになると嬉しいです。

──とはいえ、どのように政治家や政党に向き合えば良いか、なかなか難しいような気がします。

宮原:政治家であれ誰であれ、「全肯定」か「全否定」かという二者択一で判断すべきではありません。「この政治家のこういう部分は良いけど、こういう部分は同意できないな」と、情報ごとに冷静に見極めていくことが大切ではないでしょうか。

友人や家族に対しても、「ここは許せないけど、ここは可愛げがあるよね」という感覚で接していますよね。政治家や政党とも、そんなふうに向き合ってもらえると、もっと政治を楽しめると思います。

ポッドキャストが政治に興味を持つ入口に。TBSラジオ『セイジドウラク』が提案する政治の見方とは?

──リスナーとのやりとりで印象的なエピソードはありますか?

澤田:ポッドキャストを始める前は、「中高年男性に聴かれるかな」と考えていたのですが、番組イベントでは女性の割合が高かったんです。PTAの会合でも「ママ友と聴いています」と言われたことがあります。

宮原:仕事柄、選挙の時期は政治家の街頭演説を聴きに行くのですが、現地で声を掛けてもらうことが増えています。先日は、小田原の街頭演説で「以前、メールを送ったリスナーです」という方と会いました。場所を問わず聴いてもらっているのを実感します。

澤田:想像以上に幅広い層に聴かれていますね。これまで政治に関心を持たなかった方も、ライフステージの変化などを契機に「ちゃんと政治のことを知っておかなきゃ」と思い始めたのかもしれません。そういう方々が、『セイジドウラク』にたどり着いてくれているのは非常に嬉しいです。

──再生数は増えていますか?

澤田:爆発的に伸びることはないですが、少しずつ右肩上がりでリスナーは増えています。特定の回だけが突出して再生されるのではなく、どの回もコンスタントに聴いてもらえているのが特徴です。「習慣」として聴いてくださっているリスナーが多いのかもしれません。

宮原:僕らの番組は、「みんなで社会を変えようぜ!」といった熱い思いがあるわけではありません。あくまで、「政治って面白いよね」というスタンスなんです。

ただ、政治の面白さを感じてもらうためには、ある程度の知識が必要です。毎週聴いてもらうことで、「知識を得たことで、政治がより身近になった」というような感覚になっているのかなと思います。

ポッドキャストが政治に興味を持つ入口に。TBSラジオ『セイジドウラク』が提案する政治の見方とは?

発信者の意図をしっかり伝えられるのが、音声メディアの良いところ

──『セイジドウラク』は第6回JAPAN PODCAST AWARDSで、企画賞優秀賞に選ばれました。おふたりが考える音声メディアの魅力とは何でしょうか?

宮原:取材の現場で見たこと・感じたことを、「映像」がなくても臨場感を持って伝えられるのが音声メディアの強みです。活字メディアではこぼれてしまう細かなニュアンスも、声のトーンや話し方で伝えることが可能です。文章を扱う仕事をしている僕にとっても、アウトプットの場として大切にしています。

澤田:音声メディアは、視覚を制約した状態でもコンテンツとして成立させられるのが強みです。家事や通勤をしながらでも「ながら聴き」ができるのも良いですね。多くのリスナーが番組を最後まで聴いてくれるため、一部だけの「切り取り」による炎上も起こりにくく、発信者の意図をしっかりと伝えることができます。

ポッドキャストが政治に興味を持つ入口に。TBSラジオ『セイジドウラク』が提案する政治の見方とは?
引用元:「セイジドウラク(TBSラジオPodcast番組)」Xアカウントより

──番組制作で意識していることはありますか?

澤田:『セイジドウラク』は基本的に、毎週月曜17時に配信しています。リスナーからは驚かれるんですが、実は基本的に月1回の収録で4本撮りなんですよ。

「旬なネタ」と「腐らないネタ」を意識して、エピソードをストックしています。「旬のネタ」であるニュースは早めに出して、「○○○○の歴史」といったテーマは後から出せるように工夫しています。

宮原:政治オタクゆえに、ともすればニッチな話題を扱いがちになってしまいます。リスナーを置き去りにしないように、都合のつくときはTBSラジオのスタッフである矢ヶ崎さんに参加してもらっています。“リスナー代表”の視点で、疑問点や考えたことを話してもらっています。

『セイジドウラク』=政治に興味を持ってもらうための入口

──今後、音声メディアでやってみたいこと、実現したいことはありますか?

澤田:政治に興味を持ってもらうための「入口」をたくさん作りたいです。ポッドキャストもそのひとつですが、書籍やワークショップ、漫画の原作など、様々な形で政治に触れるきっかけを提供していきたいですね。この番組が、政治への関心を深めるための最初のステップになってくれることを願っています。

宮原:僕は書籍化ですね。僕らが小さい頃には、学校の図書室に「恐竜」や「三国志」に関する本が置いてありました。そういう本があれば、子どもたちも気軽に本を手にとってくれるでしょう。政治の仕組みだけを紹介するのでなく、政治家の固有名詞が出てくるような、もっと身近で面白い本を企画していきたいですね。そのためにも、『セイジドウラク』で発信を続けていきたいと思います。

ポッドキャストが政治に興味を持つ入口に。TBSラジオ『セイジドウラク』が提案する政治の見方とは?

取材を振り返って

政治についての話題は、つい“賛否”のみで語られがちです。『セイジドウラク』は、そんな政治の窮屈さを軽くしてくれるようなポップさがあります。

その秘密は、澤田さんと宮原さんが純粋に政治を「好き」であること。取材の合間にも、最近の政治ネタを交換されていました。楽しそうに語り合う姿から、番組が広く支持される理由が分かったような気がしました。

第27回参議院議員選挙が終わった今も、政治に関する話題には事欠きません。『セイジドウラク』を通じて、政治の楽しみを感じてみてください!

撮影/結城 拓人

『セイジドウラク』

https://www.tbsradio.jp/sd/