![[サウンドロゴ探求]第1回:マクドナルドの「I'm lovin' it」に隠れたヒミツ](https://audio-marketing.jp/wp-content/uploads/2025/07/boshoku-MRX9wQk4w7A-unsplash-scaled-1.jpg)
たった数秒の短い音ながら、言葉やロゴマーク以上に、人々の心にブランドイメージを深く刻み込む「サウンドロゴ」。
本連載「サウンドロゴ探求」では、私たちが知っている数々のサウンドロゴにスポットを当て、音の力で消費者の心を掴む、その効果と背景を深掘りします。
第1回となる今回は、マクドナルドのサウンドロゴに焦点を当てます。
「I’m lovin’ it」でお馴染みのマクドナルドのサウンドロゴですが、その背景にはどのような秘密が隠されているのでしょうか。今回の「サウンドロゴ探求」では、この世界的に知られるこの音がもたらす効果を深掘りします。
・使用開始年:2003年
・業種:飲食業
・展開国:米国、カナダ、シンガポール、ドイツ、日本など世界各国で展開
・ブランド名読み上げ:なし
・コピー&タグライン:なし(公開当初はあり)
世界中で高い認知を誇る「I’m lovin’ it」
マクドナルドのサウンドロゴは、世界中で認知され、最も成功したサウンドロゴのひとつです。
マクドナルドのキャッチフレーズでもある「I’m lovin’ it」は、ポジティブなメッセージを記憶の残りやすいメロディとリズムで表現し、マクドナルドのブランドイメージと合致させることで、聴く人に好意的な印象を与えています。
日本のマクドナルドでは、多くの場合「I’m lovin’ it」という英語のフレーズがそのまま使用されています。しかし、世界では「I’m lovin’ it」をそれぞれの言語に翻訳して使用しているケースも多数あります。
ドイツやスペインなど世界の言語に翻訳
例えばドイツでは「I’m lovin’ it」をドイツ語に直訳した「Ich liebe es」というフレーズが用いられています。
また、スペインやラテンアメリカでは、「I’m lovin’ it」をスペイン語に訳した「Me encanta」というフレーズが用いられています。
「love」はスペイン語に直訳すると「amar」ですが、これは非常にロマンチックな愛情を示す言葉なので、「like」に近い「encantar」があえて選ばれています。
このように、マクドナルドは「I’m lovin’ it」を単に直訳するだけでなく、各国の文化的なニュアンスや言語の特性を考慮し、最も効果的にメッセージが伝わるようにローカライズしています。これにより、世界中の消費者に対して、一貫したブランドイメージを維持ながら親近感も同時に持たせることに成功しています。
世界中の言語に訳されている「I’m lovin’ it」ですが、普段英語バージョンしか聴いていない私たちでも、いちど聴くだけでマクドナルドのサウンドロゴだと認識できるのはなぜでしょうか?
その背景にあるのは、「I’m lovin’ it」の前に流れている「パラッパッパッパー」のメロディです。マクドナルドのサウンドロゴの秀逸さは、「I’m lovin’ it」というフレーズだけでなく、この「パラッパッパッパー」のメロディにも隠されています。
「パラッパッパッパー」が持つ普遍性
2003年にマクドナルドの「I’m lovin’ it」と共に登場した、「パラッパッパッパー」というメロディは、シンプルながらも非常に効果的なサウンドロゴとして機能しています。現在ではメロディのみでサウンドロゴとして活用されています。
わずか数音で構成されるメロディながら、上昇・下降する明確な音の動きがあります。これに「パッ」という破裂音と「パー」という持続音が組み合わされ、一度聞いただけでも記憶に残りやすいリズム感を持っています。
また、高い汎用性と適応性を持っており、テレビやラジオ、オンライン広告、店舗内BGMなど、あらゆるメディアやシチュエーションで使用されても存在感を失いません。たとえ鼻歌でも歌われても、マクドナルドのサウンドロゴだと認識できます。
さらに、歌詞を持たないメロディであるため、世界中のどの文化圏においても、その意味合いやブランドとの結びつきが損なわれることがありません。まさに普遍的なブランド識別子として機能しています。
この普遍性を持った「パラッパッパッパー」が最初に流れ、そして各言語に訳された「I’m lovin’ it」が流れることで、普遍性とローカル性を兼ね備えた一体感のあるサウンドロゴとして成り立っているのです。
まとめ
マクドナルドのサウンドロゴは、そのシンプルさ、普遍性、感情への訴求力、そして強力なブランド想起力において、マーケティング戦略における音の力の重要性を示す好例です。
このサウンドロゴは、単に商品を宣伝するだけでなく、マクドナルドというブランドが持つ価値観や体験を、聴覚を通じて世界中の人々に効果的に伝えています。まさに、マーケティング史に残る傑作サウンドロゴと言えるでしょう。
参照
「ハンバーガー」の語源は、ドイツの都市「ハンブルク」らしい。