カナダの音声業界が、ポッドキャストを文化政策の一環として支援するよう連邦政府に要請しました。成長を続ける音声市場の現状と課題を訴えています。

ポッドキャストの文化的価値を訴える
2025年6月19日、カナダの音声業界を代表する企業や団体が連名で、ポッドキャストを文化政策の一環として支援するよう連邦政府に求めるオープンレターを提出しました。宛先は、カナダの文化・同一性担当大臣であるスティーヴン・ギルボー氏です。
署名には、JAR Audio、Quill、Kelly&Kelly、Pod the North、Digital First Canadaといった主要な制作会社やプラットフォームが名を連ねており、業界の中でも影響力を持つ企業が共通の立場を示す動きとなりました。
データが示す成長と制度の課題
レターでは、ポッドキャストがジャーナリズムや教育、地域の物語発信などにおいて重要な役割を果たしていると指摘されています。先住民族によるストーリーテリングや子ども向け教育番組、市民ジャーナリズムの分野などでの活用も広がっています。カナダでは、成人の約1,200万人が毎月ポッドキャストを聴いており、フランス語圏のポッドキャストは2019年以降で65%増加しています。
一方で、テレビや映画は支援対象となっているカナダ・メディア基金(CMF)やカナダ芸術評議会などの制度の中で、ポッドキャストは公的資金提供プログラムの対象として扱われていないのが現状です。署名企業は、こうした制度の見直しが必要だと訴えています。
制度見直しに向けた3つの提言と音声業界の危機感
オープンレターでは、カナダ政府に対し次の3点を提言しています。
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音声・映像形式の両方を対象とするポッドキャスト専用の支援基金の新設
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カナダ・メディア基金(CMF)の助成対象にポッドキャストを明記する制度改定
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将来の文化政策に向けた業界横断の全国的な協議の実施
こうした提言には、制度上の改善にとどまらず、音声メディアの将来に対する懸念も込められています。現在、カナダ国内のポッドキャスト視聴のうち自国コンテンツの割合は約43%にとどまり、署名者は、米国中心のコンテンツやブランド主導のAI生成番組が市場を席巻する可能性を危惧しています。
「才能もリスナーも物語もそろっています。いま必要なのは、制度としての支援です」と語るのは、Quillの創業者であるファティマ・ザイディ氏です。地域性や文化的背景を重視した番組制作を継続していくためにも、今後の政策対応が注目されます。
Quillとは
Quillは、カナダ・トロントを拠点とするポッドキャスト制作会社で、企業や団体向けに高品質なブランデッドポッドキャストを提供しています。創業者のファティマ・ザイディ氏が率いる同社は、制作から配信、分析までを一貫して支援し、ブランドのストーリーテリングを音声で強化することを目的としています。また、分析ツール「CoHost」の開発・提供も行っており、リスナーのデータ分析やパフォーマンス可視化にも注力しています。
参照元:Canadian Podcast Industry Calls on Federal Government to Fund Podcasting as Core Cultural Sector
1,200万人も聴いてるんだから支援しろー!ってわけね。