AppleはWWDC25で、空間音響の新フォーマット「ASAF」と空間音響を効率的に配信するための開発技術「APAC」を発表しました。

Appleが新たに発表した空間音響フォーマット「ASAF」
WWDC25の技術セッションにおいて、AppleはApple Immersive Videoを支える音声技術として、「Apple Spatial Audio Format(ASAF)」を公開しました。ASAFは、リニアPCMと空間メタデータを組み合わせた音声フォーマットで、リスナーの頭の動きや位置に応じて、音の方向や距離がリアルタイムで変化します。
これにより、前後・左右・上下といった音の立体的な広がりに加え、遠近感まで表現できるため、より自然な音響空間を再現できるようになります。高次アンビソニクスや多数の音源配置にも対応しており、従来のステレオ音声では難しかった没入感のある音響表現を可能にしています。
配信に最適化された「APAC」で制作と視聴のハードルを下げる
ASAFで制作した空間音響を効率的に配信するため、Appleは新たに「Apple Positional Audio Codec(APAC)」も発表しました。APACは、複数のスピーカーやヘッドホンで再生される音を調整し、特定の方向に音が聞こえるように設定するための開発技術です。64kbpsという低ビットレートでも空間的な音像定位を保てる設計となっており、ストリーミング用途に適した仕様です。
watchOSを除くすべてのAppleデバイスに対応しており、Apple Immersive Videoとの併用によって、音と映像の連動した没入体験を実現します。AppleのVRゴーグルであるApple Vision Proなどのハイエンドなデバイス専用ではなく、AirPods Proや一部のiPhone、iPadなどで、ドルビーアトモスなどの空間オーディオ対応コンテンツを再生する際にこの技術を活用できます。
また、QuickTime形式やHLSでの配信に対応しており、プレイリストに空間音響用のメタデータを追加することで、再生デバイス側での適切な音声レンダリングが可能になります。制作ツールとしては、Pro Tools用のApple公式プラグインやDaVinci Resolve StudioなどがASAF・APACに対応しており、既存の制作環境のまま高精度な空間音響コンテンツを作成できます。
WWDC25とは
WWDC25(Apple Worldwide Developers Conference 2025)は、Appleが開催する年次開発者向けイベントです。iOS 19やvisionOS、macOSの新機能に加え、開発者向けAPIや設計手法などが多数公開され、ソフトウェア開発の最新動向を把握できる機会となっています。
参照元:Apple Immersive Videoテクノロジーについて
映像や音声の完成形を、再生環境込みでキメにきてる。