インターネットラジオの代表格である「ポッドキャスト」の魅力はどこにあるのか。その配信者であるポッドキャスターへのインタビュー連載「ポッドキャスターに聴く」。
第14回は、『マンガ760』(マンガななろくまる)のパーソナリティである佐島さん、にわさんに話を伺いました。
「聴くと、新しいマンガを読みたくなる。持っているマンガを読み返したくなる」番組を目指す『マンガ760』。ポッドキャストを始めた経緯や番組制作の裏側について伺いながら、音声メディアの魅力や今後実現したいことを語ってもらいました。
『マンガ760』が語る音声メディアの魅力
本記事では、『マンガ760』のパーソナリティである佐島さん、にわさんに、ポッドキャストをはじめとする音声メディアの魅力を伺っていきます。
番組紹介:『マンガ760』
URL: https://sajimaniwa.wixsite.com/manga760
『マンガ760』は、佐島さん、にわさんの2人がマンガの魅力についてワイワイと語るポッドキャスト番組です。2人の熱量がこもったマンガトークが支持を集め、第5回JAPAN PODCAST AWARDSではカルチャー部門の最優秀賞を受賞しました。
ほとんど聴いたことがなかったポッドキャスト
──『マンガ760』はどのような番組ですか?
にわ:『マンガ760』は、色々なマンガの魅力をワイワイと語るポッドキャストです。「聴くと、新しいマンガを読みたくなる。持っているマンガを読み返したくなる」というポッドキャストを目指しています。
佐島:「気持ち良いマンガのセリフ」や「マンガのキャラクターが出演するポッドキャスト番組を考えてみる」など、僕たちならではの視点でマンガの魅力をお届けしています。

──『マンガ760』を始めたきっかけはなんですか?
佐島:僕たちはもともと同僚で、職場の昼休みに一緒にゲームをするような仲でした。あるとき、「何か一緒に発信する活動がしたいね」という話になりまして。当時は顔出しするのが難しかったのと、にわが学生時代によくラジオを聴いていたので、ポッドキャストを始めてみることにしました。
にわ:ただ、当時は2人ともポッドキャストはほとんど聴いたことがなく、番組を運営していく中で色々な番組を聴くようになりました。同じマンガ系ポッドキャストの『少女漫画喫茶』さんが『マンガ760』を紹介してくれたのも、ポッドキャストを聴くきっかけになっています。

──番組はどんな人が聴いていますか?
にわ:30代〜40代の方が一番多いです。忙しい社会人をメインターゲットに想定していたのですが、家族で聴いてくれる方もいて驚きました。家族そろってイベントに来てくれることもあって嬉しいです。
佐島:あと、番組内で紹介した作品の作者の方がX(旧Twitter)で反応してくれることもあります。その時は嬉しさ半分、恐縮する気持ちが半分といった具合ですが、なによりも驚きが一番強いです(笑)
作品を読んでいなくても楽しめるエピソードづくり
──番組づくりで大事にしていることは何ですか?
にわ:まず、番組内で取り扱うマンガやアニメ作品を楽しもうという気持ちです。例えばストーリー展開に対してツッコミを入れるときも「いや、先生はもしかしてこういうことを伝えたかったんじゃないか?」と意図を推察して楽しんでいます。
番組内で取り扱う作品を、リスナーが読んでいても読んでいなくても楽しめるようなエピソードづくりも意識しています。特定の作品の読者をメインターゲットにすることや、トレンドを意識することもあるのですが、基本的には2人の熱量が伝わるように、そのとき2人が本気で面白いと思っている作品の話をしています。
熱量が伝わるようにするため、シンプルかつ元気よく話すことも意識しています。初期のエピソードと比べるとテンションが5割くらい高くなってる実感があります(笑)
佐島:注意しているのは、社会情勢との兼ね合いですね。フィクションの話をしていても、現実のニュースを連想させてしまうこともあるので、「今このタイミングで話しても良いか」は常に気をつけています。実際に、収録はしたものの社会情勢を鑑みてボツにしたエピソードもあります。
あと、いわゆる「身内ノリ」にも気を配っています。もちろん身内ノリは音声コンテンツならではの良さでもありますが、初めて聴いた方も楽しめるように、エピソードの前半部分では身内ノリを控えめにしています。
──番組づくりにあたって参考にした番組はありますか?
にわ:『ゆる言語学ラジオ』ですね。テーマ設定や2人のトーク、ふざけ方など、参考にしているところがあります。トークの引き出しの多さは真似できないと思いつつも、見習っていきたいです。

佐島:僕は『Conan O’Brien Nreeds a Friend』という番組を参考にしています。アメリカの人気司会者のコナン・オブライエン氏がホストを務め、豪華ゲストとトークしていく番組です。自由に喋っていいという姿勢でありながら、きちんと相手の話にも耳を傾けて色々な話を引き出す話し方を学んでいます。

──普段よく聴く番組はなんですか?
佐島:同じマンガについての番組で、友達でもある『漫話群』のほか、『ヤマモトユウトのラジ推し!』や『下から目線のハリウッド』、『脳みそ垂れ流しラジオ』などを聴いています。

にわ:僕も『漫話群』をよく聴いています。あと、『霜降り明星のオールナイトニッポン』もよく聴きますね。はがき職人参加方式の企画の参考にもしています。

──初めて『マンガ760』を聴く方に、おすすめの回はありますか?
にわ:「#69 なんでそれ言っちゃうかなーってセリフの真意を考える【雑談回】」ですね。JAPAN PODCAST AWARDSでカルチャー部門 最優秀賞をいただいたエピソードです。
「やったか!?」とか「隙あり!」とかのように、それ言ったら絶対良くない結果になるじゃんっていうセリフについて、なんでこんなことを言っちゃうんだろうとキャラクターの心情に寄り添って考えてみる回です。
『マンガ760』らしいくだらなさが全開ながら、特定の作品の話をしているわけではないので、聴き始めにはうってつけだと思います。
──佐島さんはいかがですか?
佐島:僕は「#45 『キン肉マン 四次元殺法殺人事件』ネタ小説って思ってるでしょ?ちゃんとミステリしてます【ノベル760】」ですね。
マンガではなく小説版の『キン肉マン』を紹介するために、僕が千葉から京都までわざわざ駆けつけて対面収録を行ったので印象に残っています。熱量を込めて紹介できましたし、久々の対面収録でいつも以上に話が盛り上がり、僕が編集していて一番楽しかったエピソードでもあります。
ビデオポッドキャストは、新しいリスナーとの出会い&編集の楽しさに
──『マンガ760』ではYouTubeでビデオポッドキャストも配信されています。
にわ:はい。ポッドキャストで長く活動していくため、活動費を得るための一つの手段として、プラットフォーム側が収益化プログラムを提供しているYouTubeでのビデオポッドキャストを始めました。
ビデオポッドキャストを始めたことで、これまで『マンガ760』やポッドキャストを聴いてこなかった新たなユーザーに聴いてもらえる機会が増えたと実感しています。
佐島:編集は僕が担当していて、ビデオポッドキャストを始めたことで編集も楽しくなりました。編集時間が長くなって大変な側面なのですが、音声編集と比べると「思い出を記録している」という感覚が強く、編集していてとても面白いですね。
にわ:一方で、YouTubeはポッドキャストと比べてコンテンツごとに視聴数が伸びるものと伸びないものがハッキリしていて、自分たちが数字に振り回されてしまう面もあります(笑)
──番組を運営するにあたり、マネタイズの取り組みは行っていますか?
にわ:YouTubeの広告収入のほかは、Amazonアソシエイト・プログラムや、たまにグッズ販売もしています。ただ、グッズ販売は大体赤字になってしまいますね。
今後は番組スポンサーの獲得や、番組サポーター制度の導入、あと企業の広告案件にも取り組みたいと思っています。

番組継続には「強制力」も大事
──今後の目標について教えてください。
にわ:せっかくYouTubeで活動するようになったので、マンガ・アニメの聖地巡礼やイベント参加など、映像を活かした企画をやってみたいですね。
佐島:マンガ好きの人たちが集まって交流できるイベントもやってみたいですね。僕は部活動の経験が浅くて「合宿」というものを経験したことがないので、マンガ合宿みたいなことをやりたいと思っています。
にわ:長期的な目標は、やはり長く活動を続けていくことです。ただ、時間も労力もかかるため、これまで以上にマネタイズを課題に感じているところです。
──最後に、これからポッドキャストを始める人へのアドバイスをお願いします。
佐島:「強制力」が大事ですね。配信をサボること、辞めることはいつでもできるので、続けなければならない状況をつくることも必要だと思います。
『マンガ760』では、毎週水曜日に新しいエピソードを配信すると2人で決めています。2人の信頼関係が壊れない程度に、どれだけ忙しくてもド根性で必ず毎週配信するようにしています。
にわ:スタートダッシュも肝心だと思います。準備ばかりしていてもなにも始まらないので、5本くらい録りためたら、まずは番組を始めることです。ぜひ充実したポッドキャストライフを送ってください!
取材を振り返って
作品を読んでいても読んでいなくても楽しめる番組づくり。『マンガ760』のおふたりの、マンガとポッドキャスト両方に対する「熱量」を強く感じた取材でした。
インタビューにあたり、佐島さん、にわさんより『マンガ760』を紹介する音声コメントもいただいています。実際のパーソナリティの皆様の声で番組の魅力が語られていますので、ぜひお聴きください!
マンガ760
連載「ポッドキャスターに聴く」では、今後もいろいろなポッドキャスターの方々にお話をお聞きしていく予定です。その他の記事も「ポッドキャスターに聴く」の一覧ページからチェックしてみてください。