コミュニティづくりもブランディングも。マーケターの熱意と実践を伝えるアドビのポッドキャスト配信

コミュニティづくりもブランディングも。マーケターの熱意と実践を伝えるアドビのポッドキャスト配信

デジタルマーケティングにおける新たなメディアとして注目が集まるポッドキャスト。国内外でブランデッドポッドキャスト(企業が運営するポッドキャスト)の取り組みも増加しています。

企業におけるポッドキャスト配信の意義とは?ポッドキャスト番組として「Adobe Experience Cloud ポッドキャスト『Marketer’s Talk』」を配信しているアドビ株式会社の小松崎 扶美恵氏と、同番組に2回出演した経験を持つディップ株式会社の山下 ロルミス氏に、オトナル代表の八木 太亮が話を伺いました。

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アドビ社が配信するAdobe Experience Cloud ポッドキャスト『Marketer’s Talk』

番組のパーソナリティでもある小松崎氏に番組運営のねらいやポイント、そしてゲストとして複数回出演されている山下氏に動画コンテンツや活字メディアとの違いや出演者としてのポッドキャスト活用法をお聞きしました。

企業におけるポッドキャスト配信の意義とは?

本記事では、アドビ株式会社 DXインターナショナルマーケティング本部 フィールドマーケティングマネージャーの小松崎 扶美恵氏、ディップ株式会社 商品開発本部 メディアプロデュース統括部 統括部長の山下 ロルミス氏に、「企業におけるポッドキャスト配信の意義とは?その価値や活用方法を考える」をテーマにお話を伺っていきます。

企業様紹介

企業名:アドビ株式会社

URL:https://business.adobe.com/jp/

Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloudの3つのクラウドサービスで優れた顧客体験の提供を支援している。本社であるAdobe Inc.1982年、日本法人は1992年に設立。

企業様紹介

企業名:ディップ株式会社

URL:https://www.dip-net.co.jp/

「バイトル」に代表されるインターネット求人広告メディアの運営などを手掛ける人材サービス事業と、企業の業務効率化や営業支援等のDXツールを提供するDX事業を展開。労働力減少や生産性の低さなど、日本の労働市場における諸課題の解決を目指している。1997年設立。
  • ゲスト:アドビ株式会社 DXインターナショナルマーケティング本部 フィールドマーケティングマネージャー 小松崎 扶美恵氏
  • ゲスト:ディップ株式会社 商品開発本部 メディアプロデュース統括部 統括部長の山下 ロルミス氏
  • 聞き手:株式会社オトナル 代表取締役 八木 太亮

▼この対談は下記から音声(前編/後編)でもお聞きいただけます。


本記事は音声対談を活字コンテンツとして記事用に編集したものです。

コロナ禍をきっかけに、マーケティング施策としてポッドキャストを企画

アドビがポッドキャストを始めた経緯

八木(オトナル):本日はよろしくお願いします。まずはアドビにおける小松崎さんの業務内容や役割について教えてください。

小松崎(アドビ):私はアドビのフィールドマーケティングマネージャーとして、デジタルマーケティングプラットフォーム「Adobe Experience Cloud」の販促支援を行っています。製品の認知拡大と商品理解を深めてもらうことを目的に、2021年から『Adobe Experience Cloud ポッドキャスト』を配信開始しました。

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八木(オトナル):ポッドキャストに取り組むことになった経緯についてお話いただけますか。

小松崎(アドビ):コロナ禍がきっかけです。自宅でのリモートワークやイベントのオンライン化の動きが加速し、ラジオやポッドキャストなどの音声コンテンツを聴きながら仕事をする方が増えてきたタイミング、2020年秋にオトナルさんのウェブサイトに問い合わせたのがはじまりですね。

八木(オトナル):小松崎さんは問い合わせいただいた当時から、やりたいことが明確だった印象があります。

小松崎(アドビ):もともと米国にあるアドビ本社では、車社会ということもあり、すでにポッドキャストによる情報発信を行っていました。当時は「オーディオ ホワイトペーパー(ホワイトペーパー*の朗読)」というコンテンツがメインでした。ただ、それではリスナーに関心を持ってもらうのは難しいと考えていたんです。

そこで、最初に企画したのがホワイトペーパーをベースにオーディオドラマ仕立ての寸劇を加えたコンテンツでした。私自身、ニッポン放送の人気ポッドキャストシリーズ『ビジネスウォーズ/BUSINESS WARS』のファンだったこともあり、ニッポン放送に協力を仰ぎながらコンテンツを制作しました。

*「ホワイトペーパー」…企業が見込み顧客に対して、特定のテーマに関する情報や課題解決策を提供するための資料のこと。

コミュニティ活性化施策としてのポッドキャスト

八木(オトナル):2023年から、対談形式である『Marketer’s Talk』の配信が始まりました。「マーケター同士のオフ会トーク」というコンセプトですね。

小松崎(アドビ):アドビには、ユーザー会に集まったマーケター同士がナレッジシェアする場として「Adobe User Group(ユーザー会)」というコミュニティがあります。

2023年4月に、我々DXインターナショナルマーケティング本部では「Community-Led Growth (コミュニティレッドグロース)をミッションに掲げました。「マーケター同士のオフ会トーク」というコンセプトはユーザー会のあり方とも重なっており、ポッドキャストがコミュニティ活性化施策のひとつになると考えました。

また、ユーザー会は東京都内で開催されることが多いのですが、どうしても参加できる方が限られてしまいます。遠方にお住まいの方や、タイミングが合わず参加できない方。そういった方々にも、「日常業務で、アドビのユーザーはどのような取り組みを行っているのか」を伝えたいと思ったんです。

山下(ディップ):私もいちリスナーとしてアドビさんの配信する『Marketer’s Talk』を業務の参考にしています。知り合いが出演することも多く、「この人、こんな喋り方だよな」なんて楽しみながら聴くこともありますね。

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八木(オトナル):コミュニティと連携したポッドキャストならではですね。ゲストに興味や好意を持ってもらえるきっかけになっていると思います。

ポッドキャストは、会話の擬似体験

ポッドキャスト出演で、思考を整理できる

八木(オトナル):山下さんは過去2回、『Marketer’s Talk』に出演されています。出演した際の感想などはいかがでしたか。

山下(ディップ):最初は緊張するのですが、話していくうちに楽しくなりますね。対話することで、考えていたことが整理されていく感覚もありました。

アドビ製品を熟知している小松崎さんが聞き手だからこそ、というのもあるでしょう。「つくられた質問」ではないので、思いがけず深いトークになることもありました。

小松崎(アドビ):私はアドビに入社する前、15年ほど金融機関のマーケターとして働いていました。そのときAdobe Analyticsを利用していたので、「元ユーザー」としての視点も持ち合わせているからかもしれません。

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実際の『Marketer’s Talk』の収録の様子

八木(オトナル):『Marketer’s Talk』はアドビ社員である小松崎さんがパーソナリティを務めているのも特徴のひとつです。もともと人前で「話す」機会も多かったのでしょうか。

小松崎(アドビ):大人数の会議のファシリテーションを任されることは比較的多かったと思います。限られた時間で、出席者全員に発言を促すような役割を期待されることもありました。

「話す」ことは幼少期から苦ではなかったですね。中学生のときは、給食の時間に校内放送を任されていました。放送部ではなかったんですけど。

八木(オトナル):なるほど、それがまさにポッドキャストをスタートした原体験ですね。最近は、社内ラジオに取り組む企業も増えています。社員自らパーソナリティを担い、メンバーの意外な素顔や個性を伝える機会として活用されているようです。

話している人の“熱意”が伝わりやすい

八木(オトナル):ポッドキャストは、活字メディアとどのような違いがあると感じますか。

山下(ディップ):ポッドキャストの方が、話している人の思いが伝わりやすいですよね。声に“熱意”を込められるので、声のトーンの違いで「何を強調したいのか」が分かりやすいです。

小松崎(アドビ):活字メディアで記事を読んでくれた方よりも、ポッドキャストを聴いてくれた方との距離がグッと縮まっているような感覚がありますね。

八木(オトナル):私もポッドキャストを聴いてくれた方から、「八木さんとは『はじめまして』の気がしません」とよく言われます。ポッドキャストは会話の擬似体験。ポッドキャストを聴いているだけで、リスナーも会話に参加したような感覚を得られるメディアだと思います。

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ポッドキャストコンテンツ=アドビの資産

ポッドキャストの出演回を求職者にシェア。採用活動での活用法

八木(オトナル):山下さんは、ポッドキャスト出演後に反響はありましたか。

山下(ディップ):私は特に、採用活動において反響を実感しています。

当社は採用活動において、求職者との面接前に、面接官のメディア掲載情報などを伝えています。私は『Marketer’s Talk』に出演した回のURLを伝えているのですが、求職者から「ポッドキャスト聴きました」、「話をしてみたかったんです」と声を掛けてもらっています。

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ポッドキャスト収録に同席したバイトルのマスコットキャラクター「チューイチ」

小松崎(アドビ):人事で活用いただけているのは嬉しいですね。確かに面接って、「人」の情報はあまりシェアされませんよね。ディップの試みは双方の相互理解を深め、求職者と企業のミスマッチを防止する効果もあるように感じます。

八木(オトナル):ポッドキャストはコミュニケーションのフェーズをひとつ上げてくれますよね。特に山下さんの明るい人柄は、ポッドキャストこそ魅力を伝えるメディアとして最適だと思います。

山下(ディップ):面接ではスキルや経験の見極めも必要です。しかしディップで人材サービス事業を展開する中で感じるのは、求職者と企業でミスマッチが起きやすいのは人間関係だということ。面接官の情報を共有するだけでも、求職者は安心して面接に臨めるでしょう。

記憶維持率の高さもポッドキャストならでは

八木(オトナル):Adobe Experience Cloud ポッドキャストのエピソード数、100エピソードを超えます。これまで運営してきて、ポッドキャストにどんな可能性を感じていますか。

小松崎(アドビ):「Adobe Experience Cloud」のような企業向けビジネスの場合、「いかに顧客の記憶に残るか」が重要です。

ポッドキャストを始める前、「音声は動画よりも長期記憶に向いている」といった文献や研究論文を見つけました。そういった意味で、ポッドキャストはブランディングの観点からも有効だと感じています。

コミュニティづくりもブランディングも。マーケターの熱意と実践を伝えるアドビのポッドキャスト配信

八木(オトナル):ポッドキャストは「ながら聴き」ができて、かつ記憶に残りやすいメディアなので、デジタルマーケティングの手法としてさらに注目されていくと良いですね。

音の効果は、最近私の家庭でも感じています。小学生の息子が「かけざん九九」を学んでいるのですが、歌で憶えているんですよね。「1×1=1」という文字情報でなく、「いんいちがいち」という音で記憶している。昔から「音と記憶」の相性の良さは実証されてきたといえるでしょう。

小松崎(アドビ):分かります。動画マーケティングはコスト面や編集の煩雑さがネックになると思われていますが、そもそも情報量が多すぎる。音声は、声だけに集中できるのが良い点ですね。

八木(オトナル):そうですね。イヤホンによる1to1で没入状態をつくりやすいのも、音声コンテンツの特徴だといえます。

小松崎(アドビ):もともと意図していたコミュニティ活性化にも、ポッドキャストは寄与していると感じています。最近は、ユーザーの方から声を掛けてもらう機会も増え、嬉しい限りです。

山下さんのように、出演いただいた方が自らポッドキャストのことをシェアいただけるのもありがたいです。

山下(ディップ):「山下さんの回を聴いて、施策を真似しています」と言われたこともあります。話して良かったと思えますね。

小松崎(アドビ):コンテンツがストックされ、アドビの資産になっているのを実感しています。これからもポッドキャストの発信を通じて、アドビ製品とともにコミュニティの魅力をもっと伝えていきたいです。

取材を振り返って

2023年4月に配信開始されたAdobe Experience Cloud ポッドキャストの対談シリーズ『Marketer’s Talk』。アドビ製品を活用してデジタルマーケティングに取り組むビジネスパーソンをゲストに迎え、業務で感じているリアルな課題や日々の気付き、課題解決のアイデアなどを発信しています。

取材で感じたのは、小松崎氏も山下氏も、楽しみながらポッドキャストに関わっていること。「仕事」である反面、ポッドキャスト収録を通じて得られる知見やアイデアにワクワクされている様子を伺うことができました。

対話の楽しさがリスナーにも伝わり、会話の擬似体験を味わいながら日々の業務にも活かしていく。『Marketer’s Talk』を軸に、そんな好循環が生まれているのを感じます。

近年、ブランデッドポッドキャストに参入する企業も多くなってきました。それぞれの専門領域の中で、どんな「知」が創造されていくのか。アドビの実践は、ポッドキャスト運営のヒントになるかもしれません。